定年を迎えると、それまで仕事中心だった生活が大きく変わります。
朝から会社へ出かけていた夫が一日中家にいるようになったり、夫婦で過ごす時間が急に増えたりする家庭もあるでしょう。
定年前は「退職したら夫婦で旅行でもしたい」と考えていたのに、いざ一緒にいる時間が増えてみると、
「毎日ずっと一緒にいるのがしんどい」
「一人になる時間がほしい」
「些細なことまで気になってイライラする」
「この先ずっとこの生活が続くの?」
と戸惑うことがあります。
長年連れ添った夫婦だからといって、いつも一緒にいることが心地よいとは限りません。
定年は、仕事だけでなく夫婦関係を見直すタイミングでもあります。
これからの第二の人生をお互いに気持ちよく過ごすために、どのような関係を作っていけばよいのでしょうか。
定年後に夫婦関係がしんどくなるのはなぜ?
定年後に夫婦関係が変わる大きな理由の一つが、生活時間の変化です。
現役時代は、夫婦それぞれに生活のリズムがありました。
仕事へ行く、家事をする、友人と会う、買い物へ行くなど、お互いが別々に過ごす時間が自然に存在していた家庭も多いでしょう。
ところが定年すると、そのバランスが突然変わります。
これまで朝から夕方まで家にいなかった人が、一日中家にいるようになる。
昼食を毎日用意する必要が出てきたり、「今日はどこへ行くの?」「何時に帰るの?」と聞かれたりする。
一つひとつは小さなことでも、それが毎日続くことでストレスになることがあります。
これは必ずしも夫婦仲が悪くなったからではありません。
これまでとは生活環境が大きく変わったのに、夫婦の距離感だけが以前のままだから苦しくなっている可能性もあります。
夫婦だから「ずっと一緒」でなくてもいい
定年後は「これから夫婦でゆっくり過ごせる」と考える人もいます。
もちろん、それを楽しみにしている夫婦なら問題ありません。
しかし、一方が「何でも夫婦一緒にしたい」と考え、もう一方が「自分の時間を大切にしたい」と考えていると、すれ違いが起こります。
大切なのは、
夫婦だから一緒に行動するのが当然、と考えないことです。
一人で買い物へ行ってもいい。
それぞれ違う趣味を持ってもいい。
別々の友人と出かけてもいい。
家の中でも、お互いが一人で過ごす時間を作って構いません。
一緒にいる時間の長さよりも、「一緒にいたいと思える時間」を作るほうが大切な場合もあります。
少し離れる時間があるからこそ、夕食のときに「今日はこんなことがあった」と話せることもあるでしょう。
「相手に何をしてほしいか」を言葉にする
長年一緒に暮らしていると、
「言わなくてもわかるはず」
と思ってしまうことがあります。
しかし、定年後は生活環境そのものが変わるため、これまでの暗黙のルールが通用しなくなることもあります。
たとえば、
「昼食くらい自分で用意してほしい」
「毎日の予定を聞かれるのが嫌」
「家事を少し手伝ってほしい」
「週に何日かは一人で過ごしたい」
と思っていても、相手は気づいていないかもしれません。
我慢を続けて、ある日突然「もう限界」となる前に、小さな不満の段階で伝えることが大切です。
ただし、
「あなたが家にいるから疲れる」
と相手を責めるのではなく、
「私は一人で過ごす時間もほしい」
「これからは家事を少し分担したい」
というように、自分がどうしたいのかを伝えると話し合いやすくなります。
家事や生活の役割を見直してみる
定年後の夫婦関係で不満につながりやすいものの一つが、家事の負担です。
現役時代の役割分担が、そのまま定年後も続いている家庭もあります。
しかし、夫婦のどちらかが仕事を辞めて家にいる時間が増えたのであれば、一度役割を見直してみてもよいでしょう。
料理、洗濯、掃除、買い物、ゴミ出しなど、家庭にはさまざまな仕事があります。
最初から半分ずつにする必要はありません。
「朝食は自分で用意する」
「週に2回は夕食を担当する」
「買い物は一緒に行く」
など、できるところから変えていく方法があります。
これから何十年も続く可能性がある生活だからこそ、どちらか一方だけが我慢するのではなく、二人にとって無理のない新しい生活スタイルを作ることが重要です。
夫婦それぞれに「自分の世界」を持つ
定年後の生活を夫婦関係だけに頼ってしまうと、お互いに負担になることがあります。
「話し相手は配偶者だけ」
「出かける相手も配偶者だけ」
「休日も毎日一緒」
という状態になると、一方が窮屈に感じることもあるでしょう。
だからこそ、夫婦それぞれが自分の世界を持つことも大切です。
趣味を始める。
昔の友人に連絡する。
地域の活動に参加する。
短時間だけ働く。
習い事へ行く。
一人で散歩や旅行を楽しむ。
それぞれが自分の時間を楽しめるようになると、相手に求めるものが少なくなり、夫婦関係にも余裕が生まれることがあります。
「夫婦仲が良い=何でも一緒」ではありません。
それぞれの人生を楽しみながら、必要なときには支え合える関係も、第二の人生における夫婦の形の一つです。
「離婚したほうが楽かも」と思ったら
夫婦で過ごす時間が増えることで、それまで見ないようにしていた問題が表面化することもあります。
「もう一緒に暮らしたくない」
「残りの人生くらい自由に生きたい」
「離婚したほうが幸せなのでは?」
と考える人もいるでしょう。
そう感じたからといって、すぐに結論を出す必要はありません。
まず考えたいのは、
相手そのものが嫌なのか、それとも現在の生活スタイルが苦しいのか
ということです。
一人の時間を増やしたり、家事を分担したり、それぞれの趣味を持ったりすることで関係が変わる可能性もあります。
一方で、長年積み重なった問題があり、「これからも一緒に生きるべきなのか」と真剣に迷う場合もあるでしょう。
離婚には生活や住まい、お金など現実的な問題も関係します。大きな決断だからこそ、感情だけで急いで決めず、自分がこれからどんな人生を送りたいのかを含めて考えることが大切です。
これからの夫婦関係に答えが出ないときは
長く一緒にいる相手だからこそ、誰にも相談できずに悩んでしまうことがあります。
友人に話せば「長年一緒なんだから我慢したら?」と言われるかもしれない。
子どもに心配をかけたくない。
相手本人には本音を言いにくい。
そんな状態で一人だけで考えていると、
「我慢するしかないのかな」
「離れたほうがいいのかな」
と同じ考えを繰り返してしまうことがあります。
そのようなときは、夫婦以外の第三者に話してみる方法もあります。
夫婦問題を扱う相談窓口やカウンセリングなどを利用するのも選択肢です。また、「これからの夫婦関係や自分の人生について、違う角度から考えるきっかけがほしい」という人の中には、占いを利用する人もいます。
もちろん、「離婚する・しない」といった大切な決断を占いだけに委ねる必要はありません。
誰かと話すことによって、
「本当は離婚したいわけではなく、一人の時間がほしかった」
「相手にもっと自分の気持ちをわかってほしかった」
「これからは夫婦だけでなく、自分自身の人生も大切にしたかった」
など、自分でも気づかなかった本音が見えてくることがあります。
答えを出してもらうためではなく、自分の気持ちを整理するために第三者の視点を借りる、と考えてみてもよいでしょう。
定年後は夫婦関係を作り直すタイミング
定年後に夫婦でずっと一緒にいることをしんどいと感じても、それだけで夫婦関係が終わっているとは限りません。
これまで何十年も続けてきた生活が大きく変わるのですから、二人にとって心地よい距離感も変わって当然です。
一緒に過ごす時間。
一人で過ごす時間。
家事の分担。
趣味や友人との時間。
これからの生活について、一つずつ話し合ってみましょう。
定年は、夫婦が24時間一緒にいる生活の始まりではありません。
むしろ、「夫婦でありながら、それぞれの人生も大切にする関係」へ作り直すタイミングと考えることもできます。
残りの人生をどのように過ごしたいのか。
夫婦としてどうありたいのか。
そして、自分自身はどう生きたいのか。
これまでの夫婦の形にこだわらず、二人にとって心地よい新しい関係を少しずつ探してみてはいかがでしょうか。
